切り旗ヶ丘のおはぐろ松

専修庵の裏山に広がる「切り旗ヶ丘」

専修庵の裏山に広がる「切り旗ヶ丘」

 津幡町笠谷地区の倉見区に、切り旗(キリバタ)ヶ丘というところがあります。専修庵(せんしゅうあん)をさらに山あいに入ったところで、「おはぐろ松」と呼ばれる古い松の木があり、キツネにだまされた山伏(やまぶし)の伝説が残っています。
 専修庵の上の方に「切り旗ヶ丘」という広い草原があり、その一角に1本の古い松の木がありました。その昔、1人の山伏が笠谷へ行くのに、のぞき坂という長い坂の中ほどまで来た時、道の真ん中に大きなキツネが1匹寝ていました。山伏はびっくりしましたが、「こやつだな、よくこの辺りで人をたぶらかすキツネというのは。よーし、ひとつ驚かせてやろう」とさし足、ぬき足、キツネのお尻の方に近づいて行きました。そして、持っていたほら貝をブーッと吹き鳴らしたので、キツネはビックリ仰天、一目散に山の中に逃げ込んでしまいました。
 「ハハハ、愉快、愉快」と山伏は得意になっていましたが、頂上の切り旗ヶ丘に出た頃に、辺りは暗くなってきました。ハテ不思議なこともあるものだと、山伏は広い切り旗ヶ丘をあちこちさまよい歩いたところ、はるか向こうの方に明かりが見えました。「やれうれしや、あそこで一夜の宿をお願いしよう」と思いながら、たどり着いてみると、みすぼらしい家の囲炉裏(いろり)に焚き火がしてあり、1人の女がお歯黒(おはぐろ)を塗っている最中でした。山伏は静かに「旅の者ですが、途中で暗くなって困っています。一晩泊めていただけませんか」というと、女は「それはお困りでしょう。どうぞお泊まりください」といいました。
 山伏は喜んで囲炉裏のそばに座ると、お歯黒をつけ終わった女は、山伏の顔にすりつかんばかりに「お歯黒ついたか、つかぬか、見ておくれ」とお歯黒のついた歯をつき出しました。山伏はゾクッと身震いし、思わず後ずさりした途端、スッテンコロリンと仰向けに奈落の底へ転がり落ちてしまいました。
 気がついてみると山伏は下の畑に横たわっており、家もなければ、女もおらず、日はまだ暮れていませんでした。山伏はキツネにだまされたのです。そこは古い松の木の下で、村人はその松を「おはぐろ松」と呼んでいました(笠谷地区の伝説「おはぐろ松」の話より引用)。
お歯黒:古来、女子が一人前になった印として歯を黒くそめたものが、後にその時期が遅れ、既婚者の印と思われるようになった。
山伏:野や山を歩き、仏教の修行をするお坊さん。

所在地 〒929-0455 石川県河北郡津幡町字倉見
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アクセス 津幡町市街地から県道218号線に入り、鳥越方面に向かいます。左手に見える「倉見口」バス停を過ぎると、Y字路に出ます。そこを「津幡運動公園」方面に右折し、「杉瀬境橋」を渡ってすぐに左折します。そのまま県道218号線を直進し、しばらく行くと、右手に「ウェルピア倉見」が見えます。その手前の横の細い道を入り、「専修庵」に続く石段を上ります。「専修庵」横から裏山に続く山道を登っていくと、「切り旗ヶ丘」に着きます。



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