加茂遺跡

加茂遺跡から発見された「加賀郡牓示札」(石川県埋蔵文化財センター所蔵)

加茂遺跡から発見された「加賀郡牓示札」(石川県埋蔵文化財センター所蔵)

 津幡町英田(あがた)地区の加茂区にある加茂遺跡は、古代の交通史を考える上で重要な遺跡として注目されています。加茂遺跡の調査は、国土交通省が施工する国道8号(津幡北バイパス)の改築工事に伴い行われました。これまで6回の発掘調査が行われ、その結果、弥生時代から室町時代にかけての遺跡であることが分かりました。奈良、平安時代については、五畿七道(ごきしちどう)の1つである古代北陸道と河北潟に向かい流れる大溝(おおみぞ)、掘建柱建物(ほったてばしらたてもの)群、井戸などが発掘され、また、出土遺物には木簡(もっかん)、漆紙文書(うるしがみもんじょ)や大量の墨書土器などの文字史料や帯金具、瓦など一般集落ではあまり出土しない遺物も含まれています。これらのことから、同遺跡は陸路と河北潟を介した水路の両交通の要衝に位置する官衙(かんが=役所)であったと考えられています。
 同遺跡から発見された「加賀郡牓示札」(かがぐんぼうじふだ)は、律令政府が人々に向けて出した命令に、加賀国と加賀郡がそれぞれ文書を付け、加賀郡が郡内の村の有力者に宛てて出した命令書です。平安時代の前半にあたる嘉祥年間(848〜851年)に書かれました。その用途は、禁令などを交通の要衝に掲示し、律令政府の命令を広く伝達するもので、いわば古代のお触れ書であることがわかりました。
 その内容からは、勧農政策や命令伝達の方法、文書行政の実態、律令制の変容など、当時の状況を具体的に知ることができます。また、地名・人名などの固有名詞を除けば、全国的に通用する内容です。おそらく同様の牓示札が全国に掲示されていたと思われ、加茂遺跡での発見はその第1号で、文字が明瞭である点では、国内の同種資料の中でも第1級の折り紙が付けられています。
 牓示札の大きさは、縦23.7センチ、横61.3センチ、厚さ1.7センチです。上下の割れた部分を復元すると、およそ1尺×2尺となり、古代の紙と同じ大きさになります。ヒノキの横板を用いており、27行360字が書かれていたと考えられます。この牓示札は現在、石川県立歴史博物館(金沢市出羽町3-1)1階の第1展示室で常設されています。
 牓示札が出土した場所は、国道8号線(津幡北バイパス)の加茂インターチェンジを降りた陸橋下にあります。「加茂遺跡広場」として整備され、南側に駐車場があります。
◆2010(平成22)年6月29日 石川県重要文化財指定
 加茂遺跡は加茂、舟橋地内に位置し、かつて西側には金沢平野の北端を占める河北潟が広がり、東側丘陵部の谷から舟橋川が流れ込んでいました。舟橋は地名の通り、干拓前は船着場がありました。現在でも、県道59号線沿いには古民家が立ち並び、干拓前の面影を色濃く残しています。

所在地 〒929-0321 石川県河北郡津幡町字加茂
お問い合わせ先
電話番号
ホームページ 津幡町動画チャンネル「加茂遺跡出土遺物展示会」
http://www.youtube.com/watch?v=c7Ohfb5_1dE&feature=g-user-u
アクセス 津幡町市街地から県道59号線に入り、かほく方面に進みます。舟橋を過ぎると、国道8号線(津幡北バイパス)の陸橋下に出ます。その左側に「加茂遺跡広場」があります。



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