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家族経営協定

 魅力的な家族農業経営を築くには、農業に携わる家族全員が意欲とやりがいを持って経営に参画し、その能力を発揮することが大切です。農業をとりまく環境が複雑化する中で、家族一人ひとりが農業経営の状況を把握し、将来の経営目標やその実現のための具体的な取組内容などを共有化することは、経営の発展や将来展望を切り開く上でとても大切です。


 家族経営協定は、経営方針や営農計画、役割分担、収益の配分、働きやすい就業条件、将来の経営移譲などを家族で十分に話し合い取り決めるものです。女性農業者や後継者の主体的な経営への参画や家計と経営を分離し、家族みんなでつくる共同経営を確立する大変有効な手段です。

ー 目次 ー

家族経営協定のめざすもの

経営内の「個」の確立
 個人の立場の尊重、世帯員個々の意欲と責任ある経営参画など

経営の近代化
 家計と経営の分離、役割の明確化、生産・販売にかかわる経営方針の明確化など

経営の継続性の確保
 農業後継者の地位の安定、経営資産の細分化防止など

家族経営協定で取り組む4つの重要事項

家族みんなが経営に参画
 家族みんなが「家族経営協定」に調印し、経営に主体的に農業経営に参画しているという考え方が大切です。
 女性農業者や後継者も経営に参画し、家族みんなで経営方針の協議や収益の配分、役割の明確化などを行う「パートナーシップ経営」を確立しましょう。

女性農業者の地位確立
 女性の農業労働、家事労働を適正に評価するとともに、日の農作業時間の設定や休日の確保などを取り決めましょう。
 配偶者や後継者のお嫁さんの預金口座を設け、確実に報酬を支払いましょう。

後継者の自立を応援
 農業経営の円滑な世代交代を実現するため、農業後継者への経営委譲の時期や方法を明確にするとともに、中・長期的な経営計画を立てましょう。
 農業後継者が新規の経営部門を導入する場合、資金調達や経営資産の貸与等幅広い応援をしましょう。

法人経営の確立を支援
 農業経営の法人化が推進されていますが、まずは「家族経営協定」を通じて、農業に従事する者の地位確立や経営管理の近代化を図ることが必要です。
 家族農業経営の法人化の後も、家族の就業条件の明確化や相続をめぐる調整等を実現するため、引き続き「家族経営協定」を結びましょう。

家族経営協定書とは

なぜ協定を文書化するのでしょうか?
 文書にすると、協定内容がより明確になり、協定を守っていこうという一人ひとりの自覚と責任が高まります。
 また、文書化に伴い、さらに意見交換を促し、絶えず経営改善の方向を検討することにつなげます。

女性の社会参画を後押し
 家族経営協定で休日や報酬がしっかり決まり、女性が安心して外出できるようになったという声を聞きます。
 その結果、農業委員やJA役員等への女性登用が全国各地で進んでいます。

さまざまなケースで効果
 家族経営協定は、家族の話し合い活動の一環ですから、(1)後継者のいない夫婦2人の経営、(2)兼業農家、(3)一戸一法人など、家族の構成や経営の形態などに関係なく、幅広いケースで効果を発揮します。

家族経営協定のための視点

就労条件の整備
 労働報酬の支払いや収益の配分(支払方法や金額)、農業者年金への加入、労働時間(日々の労働時間や休憩時間など)、休日・休暇、快適な作業環境

経営管理の充実

 簿記帳簿(単式・複式、担当者、経営分析)、税務申告(青色・白色、効果)、経営方針(定期的家族会議、経営の部門担当)、作業日誌(担当者)

円滑な世代交代
 経営権の移譲、経営資産の移譲、相続への対応(細分化防止)

生活面のルール化
 家事労働(役割分担)、生活管理(家計費、家計簿)、住居、老後の生活設計(老後の備え、介護)

家族農業経営協定締結まで

現状把握
 上記の家族経営協定のための視点を参考に、家族みんなの話し合いで、経営や暮らしの現状を見つめなおし、家族の就業条件や生活条件をめぐる課題や改善すべき点を明らかにします。

対応策の検討
 家族構成員の就農意欲の向上・経営内での立場の明確化を図るための対応方向を考えます。また、簿記記帳等の計数管理を踏まえて、これからの経営目標・方針を検討します。

協定書の調印
 話し合いに基づいて、経営や暮らしの実態にあった協定書を作成します。

協定内容の点検・充実
 協定締結後は協定内容の実行状況を点検し、絶えず経営や暮らしの改善・充実に努めます。

家族経営協定の更新・見直し

 家族経営協定は、締結した後もその実効性を高め、経営や暮らしの改善を継続していくことが重要です。
 次のような時期に家族の合意に基づいて、協定の更新や見直しを検討しましょう。

  • 協定の1年更新
    (定期的な更新は協定参画者の意識を高めます。)
  • 家族構成員に変化があったとき
    (例:後継者の結婚、後継者のUターンなど)
  • 経営内容に変化があったとき
    (例:新規作目の導入、経営規模の拡大など)
  • 家族の話し合いから、協定内容の新たな項目が必要になったとき

家族経営協定の制度上の特典

 家族経営協定を締結している認定農業者、主業農家の配偶者へは、政策的な支援措置が用意されています。これらの支援措置を活用して経営改善を進めることができます。

認定農業者制度
 家族経営協定を結び、経営主以外の配偶者や後継者が共同経営者になっていれば、複数の者による農業改善計画の認定の共同申請が認められます。夫婦や親子で認定農業者になることができます。

農業者年金の保険料の国庫補助
 青色申告など、一定の要件を満たす認定農業者などは、保険料の補助が受けられますが、家族経営協定を締結し、経営に参画している配偶者や後継者も保険料の補助を受けられます。

農業改良資金の借入
 農業改良資金は創意と工夫で農産物の加工を始めたり、新作物の取組みや新たな生産・販売方式の導入などにチャレンジする取組みに支援する無利子資金貸付制度です。経営主以外の配偶者や後継者で、家族経営協定を締結していれば、この資金を借り受けることができます。

農地のあっせん
 農地の貸し借りや売買などのあっ旋を受けたいものは、家族経営協定によって共同経営者とみなされ、あっ旋の対象となります。

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